世の中に、納豆そばを食べる家庭はどれぐらいあるのだろうか。時々食べている人は幸いである。蕎麦屋のメニューにもない、しかし、日本食ならではの傑作だと信じて疑わない。
茹でて冷たく水を切った蕎麦。その上に納豆、生卵、葱、三つ葉(あるいは貝割れ)などの具が乗る。今日は、特別に茗荷が加わる贅沢バージョン。これに、そばつゆをかけまわし、掻き混ぜる。納豆が絡んだ蕎麦は、とても重い。それを我慢して、納豆がちゃんと糸を引くまで、混ぜて混ぜてかき混ぜ続けると、薄茶色の納豆の糸が細かく泡立ち始め、早く食べて、と言わんばかりの芳香を放ち始める。こいつを、どんぶりの底にたまったそばつゆを掬うようにそばと具に絡め、口中に運ぶ。このときは、親の仇に遭ったように大きく口を開け、気合を入れて大量に掻き込むべきである。ずるっ、ずずーっと蕎麦、納豆、生卵の甘み、それらを打ち消す香味野菜の味が口一杯に広がる。生きている幸せとはこのことかと思う瞬間だ。かき混ぜるのに費やした苦労が報われる。もう一度その快楽が味わいたくて、もう一口食べる。さらにもう一口。そばつゆが、ともすればどんぶりの底に溜まりたがるので、下から上に、上から下に、時々全体を大きくかき混ぜて味が均一に行きわたるように気を配りながら、一気に食べる。最後はどうしても納豆つぶが底に残るので、どんぶりを口につけ、箸でがーっと掻き込んで納豆そばの完食である。 時間にしてほんの5分。調理に、相当手間がかかっているわりに、納豆そばの快楽は、いつも一瞬にして終わってしまう。作ってくれるカミサンに感謝。
by gomanis
| 2006-06-20 00:01
| 我が家の食卓
|
by gomanis
フォロー中のブログ
リンク
最新のトラックバック
以前の記事
2023年 09月 2014年 03月 2011年 11月 2011年 08月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 11月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 カテゴリ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||