2006年12月23日(土)~12月30日(土) ブラジルの美味いものあれこれ

ブラジルは、広い国だ。物産も豊かだし、複雑な近代史があり、結果として文化も多様だ。1週間余り、駆け足でイグアス、リオ、アマゾンの3ヶ所を廻る間、その、食の本質をおおまかにでも把握しようと思ったが、残念ながらできなかった。多様過ぎて、1週間ではとてもわからない。群盲象を撫でる、とはこのことか。それでも、片鱗に触れた部分だけでも記しておきたい。

1..ポルトガル料理
a0064654_11472528.jpgAntiquarius (リオデジャネイロ)
店内は、赤を基調にした落ち着いたフォーマルな雰囲気。ウェイターは、黒服蝶ネクタイである。こっちは、飛行機を降りたばかりで、ジーンズ姿、ちょっと気が引ける。

席に着くと、水(どのレストランでもそうだが、ガス有りかガス無し指定しなければならない)と一緒にまず出されたのが、コロッケが2種とパン。このコロッケが美味かった。ひとつは、蟹クリームコロッケのようなもの、もうひとつは、ほのかに牡蠣のような、海の香りがするもの。複雑で味わい深いつまみだ。後から聞いたら、牡蠣ではなく、鱈が入っているのだそうだ。この、鱈入りコロッケは、いわゆるご馳走という時には、欠かせない定番料理だそうだ。




a0064654_1148218.jpga0064654_11484524.jpg前菜は、たっぷりのオリーブオイルでソテーした海老。小さな、丸いフライパンのような金属の皿に、熱く滾ったオリーブオイルに浸った海老が、赤ピーマンの細切りとにんにくと一緒に出される。プリプリとした海老が、濃厚なオリーブオイルの香りを纏って舌の上で踊る。絶品だ。メインは、この店を教えてくれた知人の奨めで、鱈をいただく。切り身のソテーにソースがかかっているものを想像していたら、外れた。極細く切った鱈の身にチーズ味のソースを絡めたものだ。前菜のコロッケもそうだが、鱈は、干物を使う。その分、見た目、華がなくて拍子抜けしたが、口に含むと、干した鱈の凝縮した旨みと幾分きつめの塩味に、ソースの甘みがよく合って、なかなかリッチな一品に仕上がっている。但し、この日は、カミサンの頼んだ、香菜と魚介のリゾットのほうに軍配が上がった。香菜の癖のある匂いは、リゾットも強烈な個性のある一品に変える。これに歯ごたえ十分のロブスターが入り、なんとも贅沢な味わいとなっている。

鱈といい、リゾットといい、辛いものは辛く、甘いものは甘さを残して調理し、それらを調和させる。この“非規格性”が良いと思う。アメリカの料理がまずいのは、どの味も腰を折られ、中途半端なレベルで規格化されたことだろう。唯一明確な方向性は、脂っこく、カロリーたっぷりにして、満腹感をもたらすことぐらい。これでは、美味い料理ができるはずもない。

2.シュラスコ
Barra Brasa (リオデジャネイロ)
いわゆるブラジリアンステーキ。僕は、今まで、サンディエゴの店も含め、一度も食べたことがなかったので、非常に楽しみにしていた。この店も現地に駐在する知人に教えてもらった。店内は、広々としていて、ポルトガル料理の店に比べると、かなり大衆的な雰囲気。

a0064654_1149198.jpga0064654_11493343.jpgまずは、作法に従い、サラダバーへ。サラダバーと言っても、目移りするばかりの色々なサラダだけでなく、寿司(マグロ、タイ、サーモン)、海老のソテー、生牡蠣、ゆでた芋類等、実に豊富な種類の料理が並んでいる。食いしん坊の僕としては、狂喜乱舞する光景だ。中には、これから肉をたっぷり食べようというのに、タルタルステーキのようなものまである。また、付き合いで来たけど肉は苦手です、という人のためか、魚料理も何品かある。
主目的は、肉なので、逸る食欲を抑え、行儀よく少量づついろいろなものを取る。テーブルに戻って、とりあえず生ビールを注文。突き出しのような感じで、小エビのから揚げが2種出される。これとサラダをつまみながら、まずは、ビールでぷはーっと乾杯。うめー!!

目の前には、大きな丸皿がひとつ、それにフォーク、ナイフ、それからシュラスコ特有のカード。このカードは、表が、緑色で”Yes, please”、裏が赤色で、”No, thank you”とそれぞれ葡英両語で書かれている。店内を肉とナイフを持って巡回するサーバーは、テーブルの上のこのカードを見て、肉をサーブするか、スキップして次の客に移るか決めるシステム。サラダバーを食べている間は、赤を表にして置いておいたので、お兄ちゃんが肉を持って近づいてくるが、赤札を見ると、ちょっとがっかりした顔をして、去っていく。

a0064654_11495676.jpga0064654_1150116.jpgしばらくして、前菜もほぼ食べ終わったので、札を返すと、次から次へと肉が盛られだした。この食事のために、現地のガイドに虎の巻を借りた。肉の部位のポルトガル語の名称が、絵つきで解説してあるシートだ。最初に来たのはPicanha(ピカンニャ)という尻の上の方の肉。雑誌等でブラジリアンステーキレストランの広告の写真を見るたびに、なぜあのように肉が団子状になっているのだろうと不思議だったが、間近で見て真相がわかった。あれは、塊の肉を厚い輪切り状にしたものを3片、直列に“長手方向”に鉄串に刺し、それを両面炙ったものだったのだ。テーブルでは、肉汁でテーブルを汚さないよう、金属製の受け皿を下に置き、串を突き立てるように固定させておいて、客の要望に応じ、肉をこそげ取り、客の皿に盛って行く。肉の焼き具合は、ミディアムとウェルダンの間ぐらいか。味は、粗塩が振ってあるだけのような素朴なもの。それだけに肉の味がそのまま楽しめる。

File Mignon、Costelaと次から次へと平らげていった。違う種類の肉を持ったお兄ちゃんがすごい頻度で来るので、こちらも、食べている間は、札を赤にし、防戦しておかないと、皿があっという間に一杯になってしまう。中には、赤札でも構わずに盛って行こうとするお兄ちゃんもいるので、そのときは、口と手振りで、要らない、要らないと強く意思表示をしなければならない。現地の作法は、僕らのように、頻繁にカードを表裏と返さないものなのかもしれない。

サンディエゴを出る前に、中南米に詳しいKさんに教わったCupim(クピン)もしっかり食べた。これは、背中にあるコブの部分の肉だそうな。ここだけは、団子3兄弟でなく、太い塊が一個串に刺さっており、それを鉛筆を削るように、外側から少しづつ削ぎ取り、サーブしてくれる。こってりして、美味い。

牛肉だけでなく、仔羊、鶏肉、豚肉のショートリブ、それにソーセージなども供される。ラムチョップは、こうして他の肉と一緒に食べるとさすがに羊臭くて楽しめなかった。豚肉、ソーセージは、目先が変わってそれなりに美味かった。

シュラスコは、サービス精神旺盛なお兄ちゃんとの激しい攻防戦だ。色々な肉が少量づつ、しかし腹12分目まで食べられるので、肉が食いてぇー!という日には持って来いだ。それに、ポルトガル料理や、シーフード(後述)に比べ、かなり経済的なチョイスでもあるようだ。サンディエゴの店も、是非試してみよう。

3.シーフード
Satyricom (リオデジャネイロ)
a0064654_11511973.jpga0064654_11514624.jpgシュラスコから一転して、コンテンポラリーな装飾でハイソな雰囲気の店。店を入ったところには、氷に盛られた鯛や平目、その他各種の魚、大小さまざまな海老などが並ぶ。水槽には、生きたロブスター、蟹、ウニなど。この演出が、この店の売りだろう。お奨めは、と訊くと、魚介のカルパッチョ5点盛だと言う。サンプルも置いてある。うーん、ちょっとはずしたかな、と不安がよぎる。他には、ロブスターのsashimiもあると。うーん、いよいよもってはずしたかな。ロブスターは火を通したほうが絶対に美味いのに。ちょっといたずらしたくなって、ウニはどうやって出すのと訊いたら、握りもできるし、刺身でも出せます、というので、カミサンと一個づつ、前菜でもらってみた。小ぶりのウニを開いて、殻ごと小さなスプーンをつけて出してきた。ライム付。ウニは、加工済みウニ味噌のような、褐色に近い黄色、痩せて、貧弱なものだった。なんだ、ウニの味もわからないで出してるのかといよいよがっかり。ま、頼んだほうが悪いか。a0064654_11521171.jpg


他方、蛸のサラダ、平目のカルパッチョは、美味かった。やはり、彼らの得意なオリーブオイル、クリーム系の味付けをする料理を食べるほうが、無難なようだ。メインは、僕はRed Snapperのトマトソース、カミサンは、海老のソテーローズクリーム。鯛は、身がしまっておらず、トマトソースも今一切れがなかった。しかし、海老は、ソースに海老味噌がふんだんに入っているらしく、濃厚で陶然とさせる逸品だった。

客層を見ると、どうも外国人がほとんどだし、上述のように、料理にアイデンティティがない。リオでシーフードといった時にイメージしていたのは、香港、シンガポール、シドニー、サンフランシスコで行ったような、粋で、活気一杯の、現地の人も群れ集うレストランだったのだが、選択を誤ったようだ。残念。





4.ビュッフェ。
朝も、昼も、夜も、ビュッフェがある。ビュッフェの好きな国と見た。ビュッフェは、インターナショナルでありながら、必ずその国の固有の文化が出るという意味で面白い。しかも、食文化のレベルまである程度わかってしまう。

ブラジルは、そういう意味で、レベルが高かった。イグアスでは、クリスマスに当たって街中のレストランが閉まってしまっていたので、ホテルのビュッフェを食べざるを得なかったし、アマゾンは毎食、大食堂でビュッフェだった。これは、あのインフラではビュッフェしか出せないということもあるだろう。どちらも、言ってみれば、遅れた土地柄で、こういう場所では、往々にして、料理は、原始的で、単調で、炭水化物中心でまずい、という先入観念があった。これは、言っては悪いが、インドネシア、マレー料理、それからアメリカで食べるメキシコ料理からの経験則だ。

ところが、イグアスのホテルの料理は、洋食中心ということもあったが、それにしてもセンスのよさを感じさせるものだった。白身魚のチーズソース掛けや牛肉のステーキなど、とてもおいしかった。また、ゴルフボールを一回り大きくしたような、チーズを練り込んだパンもおいしかった。

a0064654_11535723.jpgアマゾンのホテルは、機会があれば詳述したいが、ジャングルの中に建てられたそれはそれはユニークなホテルだった。ここでは、毎食70~80人の観光客が一斉にテーブルを囲むのだが、野菜サラダ4品、穀物4品(白米、ピラフ、パスタ、パン各種)、それにメイン3品(チキン、ビーフ、魚)が並ぶのが常だった。サラダは、アメリカンな甘いドレッシングのほか、玉葱・パセリ・トマトなどをみじん切りにしたものが入っている酸っぱいソースもあり、これを掛けると、一遍にタイ風サラダに早変わりするのだった。チキン、ビーフ、魚は、2泊3日したうち、同じものが繰り返し出ることはなく、少しづつ調理法や味付けが変えてあった。から揚げがあったかと思うと煮込んだものもあり、飽きさせなかった。味付けは、万人受けするインターナショナルなものでありながら、きちんとローカル色を出している。特に鶏と魚は、ソースと、上に掛けてある野菜に特徴があり、少し酸味があったり、ハムを挟んで焼いてあったりで、他では食べたことのない料理ばかりだった。しかもこれらのすべてが、そこそこ美味いのだ。これは、実は、大変素晴らしいことだ。いろいろな国から来る観光客が、皆、食べられる最大公約数の味を出しながら、レベルを下げないのは、とても難しいことだ。それをこともなげにこなしているところがすごい。
デザートは、勿論、バナナ・リンゴ・みかん・パパイヤ・西瓜・メロンなどの豊富な果物が日替わりで3-4種出るほか、プリン、チョコレートケーキ、ココナッツミルクを使ったローカル菓子などもある。

5.酒
a0064654_11542656.jpga0064654_11544542.jpgいやー、やっぱり毎日飲みまくる黄金の日々だった。ビールは薄い色のライトタイプで美味かったし、ワインもたくさん飲んだ。アルゼンチンワインも飲んだが、ブラジル産のCabernet Sauvignonも美味かった。Reserva Mioloというブランド。ホテルのレストランで1本$20ほどと手ごろな価格だ。

ブラジル特産の酒で特筆すべきは、Cachaca(カシャーサ)という、サトウキビから造られた蒸留酒。ほんのわずか黄色みがかっているが、ほとんど無色透明。香りは口に含むまでほとんど感じない。これをカクテルでいただく。ライムを気前良く一個分輪切りにし、そこに大匙2杯分ほどの砂糖をぶち込む。それをすりこぎのような棒で潰しながらかき混ぜ、そこに氷をこれでもかというぐらい入れる。それからCachacaを注ぎ、ふたをしてシェークして出来上がり。砂糖がたくさん入っているので甘いが、ライムの酸っぱさ、Cashacaの強い風味で、これでちょうど良い味になる。口当たりはいいが、強い酒なので飲みすぎに注意である。僕は、それでも甘すぎるので、ライムを添えたロックでがんがん飲んだ。ホテルの目の前の露天のバーで、コパカバーナの潮騒を聞きながら飲むCachacaロックは最高だった。カミサンは、サングリアをこれまたカッポラカッポラ、いペースで。ライムの緑色が、汗をかいたグラスの中でゆらゆら揺れている。飲むほどに、脳みそが溶け出していく。旅の疲れも癒える一瞬だ。
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by gomanis | 2007-01-01 12:03 | 美食


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