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2008年4月24日(木) 鳥茂 昭和に酔う

2008年4月24日(木) 鳥茂 昭和に酔う_a0064654_134037.jpg『東京の古典酒場』という雑誌だったか、はたまたウェブで見たのか、記憶は定かでないが、前から来たいと思っていた店だった。これも、この2、3年、焼きトンが好きになってからだ。

会社のオフィシャルディナーでは、ほとんど何も口にせず、ひたすら空腹を我慢し、お開きになるのを待って、夜10時過ぎ、よだれを垂らさんばかりの勢いで、同僚のTS君と2人で暖簾をくぐる。五反田の有楽街の一角。一階はカウンターのみ。もうもうと煙が上がっている。女将さんと、息子と思しき旦那の2人で切り盛りしている。はて、雑誌には、気難しい親父がいると書いてあったような気がするが?記憶違いか。

店内は、とにかくあらゆるものが、この店の経てきた時代というものを纏い、燻され、脂にまみれ、昭和のヘビーな空気を醸し出している。56年前の創業だという。たとえば、壁にかかった木札。黒く、脂にまみれ、文字はまったく判読不能である。女将さんに聞くと、『掛売りお断り』と書いてあるのだそうだ。うーん、『今日は、つけといて』とそういう時代もあったのだろうな。また、反対側の壁には、昔使っていた縄暖簾がかかっている。これも脂をたっぷり吸い、縄と縄がくっついてしまっている。

2008年4月24日(木) 鳥茂 昭和に酔う_a0064654_142413.jpg2008年4月24日(木) 鳥茂 昭和に酔う_a0064654_144399.jpgさて、その脂の元となっている串焼き。ここは、鳥茂と名乗るが、実はもつ焼き屋。煮込みをもらった後は、要領がわからないので、お任せで焼いてもらう。ハツ、コブクロ、軟骨、つくねなど。僕の目の前の炭火で、タレをつけては焼き、焼いてはまたタレをつける。もうもうと、脂をたっぷり含んだ煙が盛大に上がる。これでは、店中のものが黒くなるわけだ。味は、濃い。タレの味を楽しみながら、肉を噛みしめる。旨い、旨い。酒は、ホッピーを飲みたかったが、置いてないというので、芋焼酎をロックでもらう。小ぶりのグラスでいくらでも飲めてしまう。

左には、女性2人と男性1人、3人組の客。皆、50前で常連という感じ。陽気に騒いでいる。僕のすぐ隣には、40歳ぐらいのおっちゃん。完全に出来上がっている。連れがいたが、先に帰ってしまったらしい。女将さんにもう飲むなと叱られながら、もうちょっと、もうちょっととせがんでいる。その向こうには、若い男の客。1人で何か書類を見ながら飲んでいる。ウェブには、居心地は悪いがもつ焼きは旨い、と書いてあったが、そんなことはない。女将さんは上品で優しいし、旦那ももの静かだし、居心地はすこぶる良い。

テッポウが来た。腸のどこかだという。これがめっぽう美味かった。噛めば噛むほど、肉汁とタレの味が渾然一体となって口に広がる。臓物の臭みはまったく感じられない。もうひとつ感動したのは、お新香。蕪、黄瓜、人参の糠漬けだ。結婚して、義母の漬ける糠漬けを食べて以来、外で食べる糠漬けには、過度な期待は持てなくなってしまったが、ここの糠漬けには、同行のTS君と思わず顔を見合わせて唸ってしまった。もつ焼きの脂っこさを中和するさっぱり感も手伝ったかも知れない。

ガタン!と大きな音がした。見ると、隣のおっちゃんが床にこけている。椅子から転げ落ちたらしい。もう、しっかりしなさいよ、と女将さんがまた叱る。いいなぁ、こういうの。

最後は、野菜を焼いてもらう。銀杏、椎茸。さっぱりとして美味かった。たっぷり食べて、飲んで2人で¥11,000。僕が仙台で洟垂らしのガキだった頃に、ここでモツ焼きを頬張り、焼酎を飲んでいたオヤジがいたのだろうな、と時差ぼけと焼酎ですっかり霞のかかった頭で感慨に耽るのだった。

名代 鳥茂
品川区東五反田1-15-8-9
Tel: 03-3443-2211
閉店午後11時
by gomanis | 2008-04-27 01:05 | 美食


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